第3話では、
「COPはカタログ通りに信じてはいけない」
「寒冷地では、効率の前提条件がそもそも違う」
という話をしてきた。
では、いよいよ本題に入る。
実際に、月いくらかかるのか。
感覚や印象ではなく、
実測と計算で確かめてみたい。
【第1話】−9℃の朝。灯油が高い今、エアコン暖房は本当に安いのか?
【第2話】COPとは何か?寒冷地でエアコン効率が落ちる理由を整理する
【第3話】COPってそもそも何?エアコン暖房の「効率」が見えない理由
【第4話】 寒冷地の暖房費はいくら?エアコンと灯油100Lを月額で比較
【第5話】 お日様が登ってきたら、エアコンの出番になる
寒冷地1月の前提条件(最低気温分布・灯油100L)
この回では、条件をできるだけシンプルに揃える。
- 寒冷地(標高約700m)
- 2026年1月の最低気温分布
- 0〜−4.9℃:5日
- −5〜−8.9℃:10日
- −9℃以下:16日
- 暖房によって1か月で消費した灯油は100L(実測)
- 灯油単価:113円/L
- 比較対象:エアコン暖房(ダイキン F63VTSXP-F)
今回は
「実際にこの家で使った灯油100L分の暖かさを、
エアコンで作ると、電気代はいくらになるか」
を逆算する。
灯油100Lで得られる熱量と暖房費
灯油は、燃やすと熱を出す。
一般的に、灯油1Lが持つ熱量は
約9.5kWh分とされている。
- 灯油100L
→ 9.5 × 100 = 約950kWh(熱)
ただし、すべてが部屋の暖かさになるわけではない。
配管や排気のロスを考え、今回は
- 有効に使われた割合:85%
と仮定する。
すると、
- 950 × 0.85 ≒ 810kWh(熱)
これが
**「1月に部屋へ入れた暖かさ」**とみなす数字だ。
エアコンは、なぜ寒いと不利になるのか
エアコン暖房は、
外の空気から熱を「集めて」室内へ運ぶ仕組みだ。
外が暖かいほど、
少ない電気でたくさんの熱を集められる。
逆に、
- 外が寒い
→ 集められる熱が少ない
→ 同じ暖かさを作るのに、より多くの電気が必要
この効率を表す指標が COP だが、
ここで大事なのは数式ではない。
寒くなるほど、効率は必ず下がる
という性質そのもの。
「どれくらい下がるか」をどう決めたか
瞬時の消費電力を測る機器は持っていない。
だから今回は、次の方法を取った。
- **カタログで公表されている性能(外気温7℃)**を基準にする
- 「寒くなるほど効率が落ちる」という物理的な性質に従って
−5℃、−9℃の効率を控えめに推定する
この方法なら、
- 前提がすべて公開できる
- 誰でも再計算できる
- 過度にエアコン有利にならない
という利点がある。
今回使った推定COP
計算の結果、今回は以下の値を使った。
- 外気温 −2.5℃ 前後:COP 約2.2
- 外気温 −7℃ 前後:COP 約1.8
- 外気温 −10.5℃ 前後:COP 約1.6
※実際の運転条件や霜取りの入り方によって変動するため、
あくまで「安全側(低め)」の推定値としている。
1月の気温分布を、電気使用量に変換する
寒い日ほど、必要な暖かさは増える。
そこで今回は
**「室温20℃ − 外気温」**を目安に、
810kWh(熱)を最低気温帯ごとに配分した。
その結果、概算はこうなった。
| 気温帯 | 熱量 | COP | 電力量 |
|---|---|---|---|
| 0〜−4.9℃ | 約105kWh | 2.2 | 約48kWh |
| −5〜−8.9℃ | 約251kWh | 1.8 | 約139kWh |
| −9℃以下 | 約454kWh | 1.6 | 約284kWh |
合計:約471kWh/月
実測ベースの電気代(冬の電気料金明細)
ここで使う電気単価は「仮定」ではない。
実際の電気料金明細(テラセル電気)から、
- 2025年12月:約34.6円/kWh
- 2026年1月:約33.1円/kWh
この家の冬の実効単価は
33〜35円/kWh程度と分かっている。
これを使うと、
- 471kWh × 33〜35円
→ 約15,500〜16,300円/月
灯油とエアコン、月額で比べると
- 灯油暖房(100L):11,300円
- エアコン暖房(推定):約15,500〜16,300円
差は、月に約4,000〜5,000円。
今回の条件では、
エアコンの方が明確に高くなった。
まとめ
- COPの数字だけでは、暖房費は見えない
- 寒冷地では、効率低下の影響が月額に直結する
- 「どちらが得か」は
地域・気温・単価・使い方で変わる
少なくともこの家、この条件では、
灯油100Lの方が、安かった

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